フリーレントとは?賃貸オフィスの制度についても解説

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フリーレントとは?賃貸オフィスの制度についても解説

賃貸オフィスを借りる際に、初期費用を抑える方法として「フリーレント」の制度に注目が集まっています。
フリーレントとは、一定期間の賃料が免除される仕組みで、導入初期のコストを抑えたい企業にとって有利です。
この記事では、フリーレントの基本的な仕組みや注意点、経理上の扱い方についてわかりやすく解説いたします。

賃貸オフィスにおけるフリーレントの賃料について

賃貸オフィスにおけるフリーレントの賃料について

賃貸オフィス契約における「フリーレント」は、一定期間の賃料が免除される制度です。
そこで、ここでは賃貸オフィスにおけるフリーレントの賃料について解説いたします。

フリーレントで賃料が免除される仕組み

フリーレントは、契約開始後の1〜3か月程度、賃料が無料になる特典です。
期間は、物件の空室期間や募集状況によって変動し、半年近く設定されるケースもまれにあります。
また、貸主が空室対策として提示することが多く、借主は入居直後の資金を内装や設備に回せるでしょう。
この仕組みは、広告費を削減しつつ早期にテナントを確保したい貸主の思惑と、初期負担を避けたい借主のニーズが一致して成立します。
ただし、共益費や管理費、光熱費は免除対象外となるケースがほとんどですので、契約前に負担額を確認してください。
さらに、免除範囲は契約条項に細かく定義されるため、ドラフトの段階で確認し修正交渉をおこなうとトラブルを防げます。

フリーレントの考え方と適用条件

フリーレントが認められやすいのは、次のような場合です。

●契約期間が比較的長期である
●貸主が空室を早く埋めたいと考えている
●築年数や立地条件が募集市場の平均をやや下回っている


交渉時には、免除月数と解約禁止期間のバランスをとることが重要です。
多くの契約では、免除期間中を含む一定期間の解約禁止条項が組み込まれます。
たとえば、3か月のフリーレントなら、1年間は途中解約できないといった形です。
また、免除幅を広げたい場合は、長期入居の意思を示したり、内装工事を自社負担とするなど貸主側のメリットを明確に提示すると交渉が進みやすくなります。

フリーレントのメリット

フリーレントの最大の利点は、初期投資を賃料に取られず、内装やITなど事業スタートに集中できる点です。
設備更新や什器購入など、短期的に資金が必要なプロジェクトでは、キャッシュフロー面で大きな効果が期待できます。
また、旧オフィスと新オフィスの賃料が重複する期間を軽減でき、移転コスト全体を抑えられます。
くわえて、免除期間を活かして段階的に人員を増やすなど、事業計画に合わせた柔軟な資金配分をおこなえるのもメリットです。

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フリーレント期間のある賃貸オフィスを探す場合の注意点

フリーレント期間のある賃貸オフィスを探す場合の注意点

フリーレント物件は魅力的ですが、賃料以外の負担や契約条項によっては、想定外のコストが発生します。
以下では、物件選定時にとくに確認したい3つのポイントを示します。

共益費や光熱費が別途発生する場合

フリーレント期間中でも、共益費は通常どおり請求されます。
共用部分の空調費がテナント按分となるビルでは、想定以上のランニングコストに驚くケースが少なくありません。
また、賃料がゼロになるインパクトは大きく、特にスタートアップでは貴重な運転資金を人材採用や販促費に振り向けられます。
さらに、光熱費も実費もしくは定額方式で負担するため、賃料が無料でも月々の支払いはゼロにはなりません。
免除範囲を明記したうえで、月次のキャッシュフローを試算しておくと安心です。
とくに、複数フロアを借りる場合は、面積に比例して共益費が増えるため、管理会社から事前に想定金額を取り寄せておくべきです。

違約金発生のリスクに注意

免除を受けた賃料は、貸主のコストです。
そのため、契約期間内に早期退去すると、免除額に相当する違約金を求められることが一般的です。
たとえば、フリーレントが3か月なら、1年未満の解約で「家賃×3か月分」を支払う規定が多く見られます。
また、半年以内の解約時には免除額全額ではなく、月数按分で違約金が計算されることもあるため、条項を細かく読み込む必要があります。
解約予告期間も2か月以上と長めに設定される場合があるので、事業計画の変動リスクを踏まえて判断してください。
とくに、新規事業で収益計画が未確定の場合は、流動性確保の観点から違約金相当額をあらかじめ引当金として見積もる方法も検討されます。
なお、更新時に再度免除を受ける交渉は難しいため、中長期のオフィス戦略全体を見据えて契約条件を固めることが大切です。

フリーレント物件の数が限られている

フリーレントは、空室対策として使われるため、立地や築年数に制約がある物件が中心です。
都心の人気エリアやハイグレードビルでは、制度自体が用意されていないことも珍しくありません。
また、希望条件を固定し過ぎると選択肢が減り、結果として追加の内装費や交通面の不便が生じることもあります。
そのため、優先順位を整理し、制度にこだわり過ぎない柔軟な物件探しが大切です。
なお、不動産仲介会社に「フリーレント希望」と伝える際は、免除月数よりも総コストやビルスペックを重視する旨を共有すると、提案の幅が広がります。

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フリーレント期間の会計処理の方法

フリーレント期間の会計処理の方法

賃料が免除になる、費用認識のタイミングがずれるため、会計処理の整合性を保つ必要があります。
とくに、監査を受ける企業は処理方法を事前に定め、社内ルールに落とし込んでおくと後の修正を防げます。
また、免除額が大きい場合は、将来利益の過大計上につながらないよう留意しなければなりません。

フリーレント期間と会計処理の関係

日本基準には統一ルールがないため、実務では「均し処理」か「発生ベース」のいずれかで処理します。
解約禁止期間がある契約では、国際会計基準IFRS16の考え方にならい、総賃料を契約月数で割って毎期計上する方法が多く採られています。
また、途中解約が可能な普通借家契約では、現金支払のタイミングで費用認識する発生ベースを選択しても問題ありません。
どちらを選ぶかは、重要性と費用対効果を比較し、監査法人とも協議して決定します。

契約期間で按分する処理方法

月額賃料30万円・24か月契約で最初の2か月が免除の場合、支払総額は660万円です。
均し処理を選ぶと、この金額を24で割った27万5千円を毎月費用として計上します。
これにより損益が平準化され、月ごとの比較が容易になります。
一方、発生ベースでは最初の2か月は費用ゼロとなり、その後は30万円を計上するため、年度をまたぐ場合には利益変動が大きくなる点に注意してください。

処理に必要な具体的条件と注意点

正確な会計処理には、次の確認が欠かせません。

●契約書に記載されたフリーレント期間と解約条項
●共益費や管理費が賃料に含まれるかどうか
●賃料改定や更新時の再評価手続き


会計方針を決める際には、税務上の取扱いとの整合も検証し、社内承認フローを通して文書化します。
また、途中解約が生じた場合は、計上済み費用を再計算し、修正仕訳で差額を調整してください。
修正仕訳の例として、免除月数が消滅した分を「前払費用」から「賃借料」に振り替える対応が挙げられます。
さらに、期中修正が遅れると決算数値に影響するため、早期の社内フロー整備が重要です。
くわえて、経理システムへ自動計上ルールを組み込んでおけば、チェック工数を減らせます。
なお、月次の自動仕訳登録機能を活用することで、人為的ミスを防ぎ、締め処理のスピードを高めることができます。

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まとめ

フリーレント制度を活用すれば、賃貸オフィスの初期費用を抑えながら、スムーズに事業をスタートさせることが可能です。
ただし、共益費の有無や解約時の違約金など契約条件に注意し、内容をよく確認して物件を選ぶことが重要です。
会計処理の取り扱いも事前に把握することで、入居後の社内手続きを円滑に進められるよう備えておきましょう。

阪田不動産株式会社

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